タワー・オブ・テラーの合成写真
2021/10/20:元写真 03-02, 17-02, 33-02, 39-02, 47-02, 81-02 を追加
2021/11/07:元写真 84-02, 84-03 を追加
2021/12/15:元写真 56-02 を追加
2022/01/13:元写真 66 を訂正(訂正前)
2022/10/15:元写真 65-02 を追加
2023/05/31:撮り下ろし写真 19, 21, 28, 40, 84-01 を追加
2023/07/31:撮り下ろし写真 19, 元写真 36-02 を追加
2015年7月、ユウ氏によって次のような記事が公開されました。
東京ディズニーシーのアトラクション『タワー・オブ・テラー』の内部に飾られている写真には、元写真(合成前の写真)が存在するといった内容です。
私はこの記事に非常に心惹かれまして、拙稿を書く2年ほど前から、ユウ氏が紹介した写真以外にも元写真が存在するのか調べてきました。
今回は、その調査の結果として、これらの写真に関して考察されること、そして元写真の紹介をしたいと思います。
合成写真に関して考察されること
はじめに、これら写真に関して考察されること3点を整理します。
1│合成は Chuck Ballew 氏によるものである
Chuck Ballew 氏は、タワー・オブ・テラーの制作に携わった元イマジニア*1です。
同氏の LinkedIn(ビジネス向けのSNS)には次のようにあります。
I personally designed the Shriki Utundu statue, the fake photos of Harrison Hightower, and the murals in the shop.
個人のプロジェクトとしては、シリキ・ウトゥンドゥの像、ハリソン・ハイタワーの合成写真、そしてショップ内の壁画のデザインを担当しました。
出典:Chuck Ballew 氏の LinkedIn(筆者訳)
ここでの「fake photos」は、前述の合成写真を指しているとみて間違いないでしょう。
事実、書籍『Walt Disney Imagineering: A Behind the Dreams Look at Making MORE Magic Real』では、後述7番の合成写真が同氏によるものであると紹介しています。
このことが、同書の著者である Melody Malmberg 氏へのインタビュー記事でも紹介されていますので、合わせてご覧ください。
2│ハイタワー三世の姿は Joe Rohde 氏によるものと思われる
Joe Rohde 氏も Ballew 氏と同様、元イマジニアです。
同氏がタワー・オブ・テラーの制作に携わった事実は確認されていませんが、主人公であるハリソン・ハイタワー三世の容姿のモデルとなった方として有名です。
2021年1月の D23 のポッドキャストにて、同氏は次のように語っています。
... we, kind of, need you to pose for this window, and then for these photographs, and then for this mosaic and then for these murals.
窓のため、次は写真のため、次はモザイクのため、次は壁画のため…ポーズをとって頂けませんかといった要領で…
出典:D23 Inside Disney Episode 69(筆者訳)
自身の顔が、外装にあるキーストーンのモチーフとなって以降、いつのまにかハイタワー三世のモデルとなっており、ポージングを頼まれたという話の中での一幕です。
ここでは「photographs」とあり、必ずしも合成写真のことを指しているとは限りませんが、可能性としては高いと考えられます。
3│元写真はすべてアメリカ議会図書館所蔵である
元写真を特定するのに最も手っ取り早く、無難な方法が、画像による検索です。
しかし、タワー・オブ・テラーは施設内の大半のエリアで撮影禁止のため、その方法は困難です。*2
となると、現地観察で得られた情報に基づいた語句による検索となるわけですが、ネット上の膨大な写真の中から語句だけで絞り込むのは、これまた困難を極めます。
その状況で、すべての元写真の特定に至れた理由こそが、アメリカ議会図書館なる暫定的な出典を偶然発見できたことと言えます。
検索対象を1つのサイトに絞り込むことができ、語句による検索効率が上がったのです。
実際にアメリカ議会図書館を出典としたかは不明ですが、原本が同図書館にある元写真も多く、全くの因果関係がないことは考えにくいと考えています。
元写真の紹介
タワー・オブ・テラー内の80を超える合成写真の元写真を、それらが確認できるエリア別に紹介します。
紹介といっても、アメリカ議会図書館におけるキャプションとリンクのみを記載し、個々の解説や合成後の写真*3は省略しています。
キャプションの前に記載の識別番号は、筆者が割り振った便宜上のものです。
元写真の撮影地・撮影時期や、属するアメリカ議会図書館のコレクション、およびアトラクション内でのキャプションは調査が完了次第、追記する予定です。
また、東京ディズニーシー各所で撮り下ろされた写真を元写真とする合成写真については、筆者がほぼ同じ画角で撮影した写真を掲載しています。
ウェイティングルーム
ウェイティングルームは、キャストが前説*4をするエリアです。
ロビー(エントランス)と書斎(プレショールーム)の間に位置します。
左と右の2部屋存在し、合成写真が最も多く飾られています。
ウェイティングルーム(左右共通)
ウェイティングルーム(左)西面(左)
東アジア・東南アジアの写真が多いのが特徴です。
02│The Royal Tombs, Chosen (Korea)
陵墓、朝鮮
03-01│On the trail through Northern Luzon
ルソン島北部の小道にて03-02│Philippine village
フィリピンの村
04│"Dandy" and bearers, Darjeeling, India
“ダンディ”と担ぎ手たち、ダージリン、インド
05│Korean coolies unloading junks, Fusan, Korea
荷降ろしをする朝鮮人労働者、釜山、朝鮮
06│Ready for a "negative" expedition - our photographer James Ricalton on board a Chinese (camel) "transport," Peking, China
“ネガティブ”な探険への支度 - 中国式(ラクダ)“輸送車”に乗る本誌写真家ジェームズ・リカルトン、北京、中国
07│The bones of tenants whose burial rental was not renewed--Santa Cruz Cemetery, Manila
埋葬地賃貸が更新されなかった借用者の骨 -- サンタクルーズ墓地、マニラ
08│Skull shelf of head hunter, Formosa
首狩り族のドクロ棚、台湾
ウェイティングルーム(左)西面(右)
北面と合わせて、南アジアの写真が多いのが特徴です。
09│Coolies with sedan chairs in front of ruins of Hindu temple of Prambanan
プランバナンのヒンドゥー寺院遺跡前の労働者と椅子駕籠
10│Coolies unloading military stores at Pieng Yang, Korea
平壌にて軍需品を降ろす労働者、朝鮮
11│Transportation
交通手段
12│A street scene in Ancient Delhi - the "Rome of Asia," India
昔のデリーの街の風景 - “アジアのローマ”、インド
13│Man in straw hat standing on Buddhist idol at ruins of Borobudur
ボロブドゥール遺跡の仏像の上に立つストローハットの男
14│Transportation
交通手段
15│Day's sport in the Terai
テライでの日中の遊戯
ウェイティングルーム(左)北面
16│Transportation
交通手段
17-01│United States "lend-lease" program in eastern India. Indian coolies unload lend-lease steel tubing from Liberty ship.
インド東部での合衆国“武器貸与”プログラム.貸与された鋼管をリバティ船から降ろすインド人労働者17-02│Valhalla
ヴァルハラ号
ウェイティングルーム(左)東面
ニューヨーク市(アメリカンウォーターフロントも含む)の写真が多いのが特徴です。
18│Winter -- Fifth Avenue (1892)
冬 -- 五番街(1892年)
19│撮り下ろし写真
(ポンテ・ヴェッキオから臨むホテルハイタワー)
20│On the promenade, Brooklyn Bridge, New York
遊歩道にて、ブルックリン橋、ニューヨーク
21│撮り下ろし写真
(クランベリー・ボグ・ロードから臨むホテルハイタワー)
22│Twenty-seventh Annual Banquet of the Hotel Association of New York City, Waldorf-Astoria, New York, Jan. 11, 1906
ニューヨーク市ホテル協会27周年記念晩餐会、ウォルドーフ=アストリア、ニューヨーク、1906年1月11日
23│撮り下ろし写真
(ハイタワー三世のペントハウス)
24│Gen. Ryan
ライアン将軍
25│撮り下ろし写真
(アトランティス・ボールルーム前の廊下)
ウェイティングルーム(右)東面
26│A fair breeze
適度な微風
27│[Kotsuis and Hohhug--Nakoaktok, wearing ceremonial dress, with long beaks, on their haunches, dancing(?)]
[コツイスとホーハグ -- ナコアクトク族、礼装し、長い嘴をつけ、しゃがんで、踊っている(?)]
28│撮り下ろし写真
(クリスタルスカルの魔宮前)
29│[The divers at the Imperial Naval Arsenal]
[帝国海軍工廠でのダイバーたち]
30│Yurok canoe on Trinity River
トリニティ川に浮かぶユロク族のカヌー
31│Masked dancers -- Qagyuhl
仮面のダンサーたち -- クワキウトル族
32│[Monument of the ancient Mayan race, Quirigua, Guatemala]
[古代マヤ人の石碑、キリグア、グアテマラ]
33-01│Men on jungle patrol in the Caribbean area take fullest advantage of natural foliage for camouflage purposes. It takes a quick eye to see these men stealing through the jungles
目を凝らさなければ見えないよう、草木で迷彩しながらカリブ海地域のジャングルを隠密行動する偵察隊33-02│Idol, Teoyaomiqui [i.e. Coatlicue]
偶像、テオヤオミキ[=コアトリクエ]
34│[2 mummies, Cerro de Pasco, Peru]
[2体のミイラ、セロ・デ・パスコ、ペルー]
35│William Jennings Bryan with Sioux chiefs at Pan-American Exposition, Buffalo, 1901
パン・アメリカン博覧会でのウィリアム・ジェニングス・ブライアンとスー族の首長たち、バッファロー、1901年
ウェイティングルーム(右)南面
ヨーロッパの写真が多いのが特徴です。
36-01│Constantinople. Column of Theodore
コンスタンティノープル.セオドアの柱36-02│Le pilote
飛行家
37│Agrigento, Sicily. An ancient Greek temple still stands after war passed it by
アグリジェント、シシリー.戦後もなお残存する古代ギリシャの神殿
38│Rome. Palace of the Caesars. Subterranean passage
ローマ.カエサルの宮殿.地下道
39-01│Rome. Baths of Caracalla
ローマ.カラカラ浴場39-02│The Emperor Titus, National Museum, Naples, Italy
ティトゥス帝、国立博物館、ナポリ、イタリア
40│撮り下ろし写真
(セントエルモ号)
42│Lucerne. Thorwaldsen's Lion
ルーサン.トーヴァルセンの獅子
43│Rome. Palace of the Ceasars
ローマ.カエサルの宮殿
ウェイティングルーム(右)西面
アフリカの写真が多いのが特徴です。
44│[East African official for Germany, formerly a sultan, Tanganyika, Africa] / C. Vincenti, Dar-Es-Salaam, 1902.
[ドイツ領東アフリカの高官、元スルタン、タンガニーカ、アフリカ]/ C. ヴィセンチ、ダルエスサラーム、1902年
45│Cairo. Pyramids and Sphynx
カイロ.ピラミッドとスフィンクス
46│[Aquia Creek Landing, Va. Wharf with transport and supplies]
[アキアクリークの波止場、ヴァージニア州.埠頭での輸送船と物資]
47-01│Cairo. Tombs of the Caliphs
カイロ.カリフの墓地
48│Egypt el Kab
エジプト エル・カブ
49│[Native types of Africa, 192-]
[アフリカ原住民族の人々、192-年]
50│Packers / Curtis.
荷造り業者たち / カーティス.
51│Kominaka dancer
コミナカ ダンサー
52│Le Colonel Lunet de Lajonquière dans la brousse d'Angkor vers I900. [i.e. 1900] C1. E.F.E.O.
アンコール奥地でのルネ・デ・ラジョンキエール大佐 I900[=1900]年頃 C1.フランス極東学院
秘密の通路
秘密の通路は、書斎(プレショールーム)から秘密の倉庫へ通じる通路です。
一般的な名称ではありませんが、開業当時の特設サイト(TOT1899.com)にて用いられていました。
ロシアの写真や肖像写真が多いのが特徴です。
秘密の通路 東面
53│Vnutri muzei︠a︡ Bi︠e︡loĭ Palaty. Rostov Velikīĭ
白の宮殿の博物館にて.ロストフ・ベリーキー
54│Ancient pottery, National Museum
古代の陶器、国立博物館
55│Mummies and heads, creations of Homer Tate. Safford, Arizona
ミイラと頭部剥製、ホーマー・テイトによる創作物.サッフォード、アリゾナ州
56-01│Chief Justice Salmon P. Chase
サーモン・P・チェイス最高裁判所長官56-02│Looking north from the tower of Notre Dame - St. Jaques Tower and Montmarte Heights in distance, Paris, France
ノートルダムの塔から南に臨んで - サン・ジャックの塔とモンマルトルの丘を彼方に、パリ、フランス
57│Muzeĭ. Ioninskai︠a︡ komnata. Rostov Velikīĭ
博物館.イオナの部屋.ロストフ・ベリーキー
58│Sepulchral vases of the ancient Greeks, museum, Athens
古代ギリシャの墓標用の壺、博物館、アテネ
59│Maori wood carvings, including large and small idols and canoe paddles
マオリ族の木彫り、大小の偶像とカヌーのパドルを含む
60│Muzeĭ. Ioninskai︠a︡ komnata. Rostov Velikīĭ
博物館.イオナの部屋.ロストフ・ベリーキー
61│V Borodinskom muzei︠e︡. Borodino
ボロジノ博物館にて.ボロジノ
秘密の通路 南面
62│Gorka iz oruzhʹi︠a︡ v Arsenalʹnom Muzei︠e︡ Zlatoustovskago zavoda
ズラトウースト工場の工廠博物館内にある武器の飾り棚
63│[Idol from a Morai at the Hawaiian Islands, Peabody Museum of Salem, Salem, Mass.]
[ハワイ諸島のモライからの偶像、セーラム・ピーボディ博物館、セーラム、マサチューセッツ州]
秘密の通路 西面
64│Pemberton
ペンバートン
65-01│Hon. Montgomery Blair
モンゴメリー・ブレア閣下65-02│[Bas-relief of troops of Louvo under Jayasmhavarman (Jayavarman or Yasovarman?) in Angkor Wat temple, Khmer ruins, Cambodia]
[アンコール寺院内のジャヤスマ(ジャヤかヤショ?)ヴァルマンとラヴォ兵の浅浮彫、クメール遺跡、カンボジア]
66│Wm. Williams
ウィリアム・ウィリアムス
ラジャズ・プール
ラジャズ・プールは、アトラクション搭乗後の退出口に位置する「タワー・オブ・テラー・メモラビリア」という名のショップエリアです。
合成写真はライドショットの購入スペースに掲示されています。
インドの写真が多いのが特徴です。
ラジャズ・プール 北面
67│Professsional dancing girls in the streets of old Delhi, India
オールドデリー市街のプロの踊り子たち、インド
68│High caste Hindus of Bombay, India
ボンベイの高位カーストのヒンドゥー教徒、インド
69-01│Interior of the royal drawing-room tent
上品な応接用テントの内装69-02│Nautch girl dancing with musicians accomp. Calcutta, India
楽師の伴奏に合わせて踊るノーチガール.カルカッタ、インド
ラジャズ・プール 北東面
70│Hindu Priest - India
ヒンドゥーの僧侶 - インド
71│King Emperor's Hunt in India
インドでの王・皇帝の狩り
72│Sacred bullocks, India
神聖なる去勢牛、インド
ラジャズ・プール 東面(上)
73│Four elephants pulling carriage, India
荷車を引く四頭の象、インド
74│A marvel of beauty - looking N. to Taj Mahal, marble tomb of a Mogul queen, Agra, India
絶美 - ムガル帝国后妃の大理石の墓廟、タージ・マハルを北に臨んで、アーグラ、インド
75│State elephant adorned with silver trappings, India
銀の装飾品をまとった国有象
76│City View, Benares, India
街の景観、ベナレス、インド
ラジャズ・プール 東面(下)
77│Professor [James] Ricalton and two of his big Cashmere friends at the Durbar, Delhi, India
ダーバーでの[ジェームズ・]リカルトン教授と大きなカシミア人の友人二人、デリー、インド
78│India--Fakir with monkeys
インド -- 托鉢僧と猿たち
79│H.R.H. the Prince of Wales, and elephant, Terai
プリンス・オブ・ウェールズ殿下、象とともに、テライ
80-01│Bathing dresses
水着80-02│Miss Helen Foulds ready to dive into water
水中に飛び込む構えをするヘレン・フォールズ嬢80-03│Yes or no?
イエスかノーか?80-04│[City children - bathing for free at the Battery, New York City]
[市の子どもたち - バッテリーでの無料水浴、ニューヨーク市]80-05│Heartbreakers along the seashore
海辺のハートブレイカーたち80-06│[Young woman modeling: Full lgth., about to dive from diving board]
[モデルをする若い女性:全身、飛び板から飛び込む寸前]80-07│Bathing dresses
水着80-08│Bathing dresses
水着80-09│On the beach
浜辺にて80-10│Bathing dresses
水着
81-01│[Snake charmers, India]
[蛇使い、インド]
82│Palanquin, India
椅子駕籠、インド
柱廊
柱廊は、庭園からエントランスにかけての屋根付きの屋外エリアです。
一般的な名称ではありませんが、特別プログラム「タワー・オブ・テラー Level 13 "シャドウ・オブ・シリキ"」の2015年の特設サイトにて用いられていました。
3つの掲示板が立てられており、写真や新聞などが掲示されています。
掲示板(中央)
83│P.R.R. [Pennsylvania Railroad] terminal, Oct. '08 [New York]
P.R.R.[ペンシルバニア鉄道]ターミナル駅、08年10月[ニューヨーク]
84-01│撮り下ろし写真
(ウォーターストリートから臨むホテルハイタワー)84-02│[Street types of New York City: Hansom driver standing in front of horse and cab]
[ニューヨーク市街の典型例:馬とハンサムキャブの前に立つ御者]84-03│A hansom at Madison Square, New York
マディソン・スクエアでのハンサムキャブ、ニューヨーク
以上がタワー・オブ・テラー内の80枚超もの合成写真の元写真です。
長い記事となってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
そして何より、タワー・オブ・テラー15周年おめでとうございます!